風に吹かれて

日常の出来事、思い出、などを綴ります

あの人は今・・


  実家の職業は 洋服の仕立て業であった。
  横文字でいうならば オーダーメイド業。


  小学校のとき 父の職業の欄に
  オーダーメイド業と書くのが
  ちょっぴり 自慢であった。
  
  お針子さん が
  男性従業員のなかに ひとりいた。


             
とても優しい人だった。 手縫いに関しては ずば抜けて早く 器用な人だった。


ある日 一軒おいた隣に 大学受験のために 県外から男子が やってきた。
その男子に お針子さんは ぞっこん 惚れ込んだのである。



その男子は受験に合格し、 隣家に 間借りをすることになった。



お針子さんにとって  初恋のひとになった。



今は メールかなんぞで 『好みのタイプなので つき合ってくださーい』とでも
言うでしょうが その当時は 手紙、ラブレターなのである。



純真無垢な 女性であった。



よりによって 高校生の私に ラブレターを書いて欲しいというのだ。
ラブレターを書いたことのない私は 困惑した。
しかし 頼まれれば ノーと言えない私であった。



一生懸命書いたけれど 『勉学に 励みたいから』と 剣もほろろであった。
何を書いたのか 記憶にないけれど 私に頼むのが 間違いである。
お針子さんの恋に キューピットは 見向きもしなかったのであった。



あれから 50年以上もの歳月が流れた。 今は 健在なのであろうか。
セーターのほつれを直しながら 懐かしさがこみ上げてきた。



              きょうお誕生日のかたおめでとうございます
    好きなのに・・

              風邪をひかないよう、ご注意くださいね


                                   【イラストAC】